我国で機関投資家といえば、公的資金を除外すると、企業年金、地域金融機関、系統金融機関、保険会社に限られます。今後は、財団なども機関投資家として成長してくるのかもしれません。これらの機関投資家は、それぞれの資金性格、それに応じたリスク管理の方法によって、類型ごとに異なる資産運用のあり方を歴史的に形成してきています。
一方で、企業年金の資産運用という一般的・抽象的なものは、あり得ません。各企業年金の資産運用には、その後ろにある母体企業の財務政策の個性が強く現れるからです。同じことは、地域金融機関の証券運用についてもいえます。基本的に全く同一の規制環境の下で銀行業を営む地方銀行とはいえ、各行の経営環境と経営方針に明確な違いがある以上、資産運用にも明確な違いが出てきます。
類型内の個性化が進むと、類型と類型の差よりも、類型内の差のほうが大きくなり得ます。例えば、企業年金の領域で退職給付会計上の債務を意識した運用が定着してくると、ある企業の年金運用のあり方は、ある生命保険会社の運用のあり方に近似しているということもあるのです。
機関投資家の類型ごとに異なる資産運用があって、各類型の中に経営の個性によって異なる資産運用があると、要は、投資家の数だけ、異なる運用の哲学と方法があるとすらいえます。企業年金であれ、金融機関であれ、経営方針と資産運用方針の連動性が強くなるからこそ、資産運用の多様化が進むのです。
多様な資産運用の考え方が現れてくればくるほど、経営の個性が前面に出でてくればくるほど、資産運用そのものに共通する基本的要素を改めて明確にしつつ、多様な経営方針を、その個性と制約条件の枠の中で、資産運用方針に具体化していく技術が重要になってきます。例えば、運用組織、意思決定の仕組み、権限の分掌、リスク管理のツールなどの整備です。
企業年金の資産運用が、独自の年金資産運用の枠組みを主張しすぎることによって、母体企業の経営方針に反してしまったり、あるいは、地方銀行等の証券運用が銀行経営から切り離された余資運用の枠組みにとどまっている限り、マネジメント(経営)としてのアセットマネジメント(資産運用)は、成り立ち得ないのです。マネジメント抜きのアセットマネジメントはあり得ません。同時に、マネジメントの対象と方法を明確にしない限り、アセットマネジメントは成り立ちません。
アセットマネジメントの原点に立ち返り、マネジメントの対象と方法の基本を明確にすると同時に、様々に異なるマネジメントのモデルを比較検討することによって、企業年金、金融機関の資産運用の新しいあり方を考え直してみようと思います。
HCアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長
森本紀行



